結成のインスピレーション 2


1からのつづきです。

PHOTO by Y.Kondo

はじめてもとことなおこが2人きりで演奏した後のこと。

演奏は終了したのに、2人とも動けず、

その姿勢のまま、長い沈黙が続きました。


もとこは混乱していました。

2年も指導者と伴奏者という関係を続け、アレンジの相談をしてきたコンビなので

なおこはもとこの好みを熟知しているだろうし、

なにより、人の呼吸を読むのが抜群に上手いピアニストなのは知っていました。


でも、この演奏は違う。

背中合わせに座っているので呼吸の具合、一瞬の筋肉の動きの遅れで相手が

合わせてくれているのかどうかはハッキリとわかります。

なおこはリラックスした身体の状態を保っていたし、もとこもストレスフリーだった。

演奏時に気になるような引っかかりはまったく無かった。


これはいったいなんなのか。

トップレベルの人が本気を出すとこんなにちがうものなのか。

ほんの軽い気持ちで合わせただけなのに

直すところが見当たらない。いままでとまったく勝手が違う。

こんな人を相手にいったい何を打ち合わせろというのか・・・。


しばらくしてなおこがポツリと

「やっぱり。・・・やっと見つけた・・・のに。」

と、声を絞り出すようにつぶやきました。

もとここそが長いこと、ずっと探し求めてきた人であると

この演奏でなおこは確信しました。

別れる間際にわかるなんて。

なおこは自分の運命にショックを受けていました。


本当はずっと わかっていました。

もとこの創ってくる音楽はどれもなおこにとって心地好いものでした。

曲の解釈や説明の仕方に「そうそう!」と

共感できる、波長の合う音楽仲間でした。

コーラスの指導でサンプルとして歌うのではなく、一度、本当のもとこを見てみたい。

一人で自由に歌わせてあげたいとずっと思っていました。


なおこは事あるごとに何度も提案していました。

でも、そのたびに「わたしひとりが歌っても、みんなはつまんないでしょ?」

「たくさんの人に歌ったり演奏してもらって輝いてほしいの。母でもなく、妻でもなく、自分自身が必要とされているという場を提供したいから。」と、

もとこには断られ続けていました。


最初で最後のわがまま・・・

そう思って「いままで2人だけでやったことないよね?」と強引に誘ったのはなおこ。

でも、明らかな結論が出たのに、間違いなく長年探していた人なのに

別れが迫っていて二度と一緒にやるチャンスはない・・・。


2人は深く絶望しました。

アンコール公演が終わったら、どうしたらいいのだろうかと。


PHOTO by Jessie

MONA’s MUSIC

MONAはハノイ駐在中に出逢ったVocalもとこ(MO)とPianoのなおこ(NA)による音楽ユニットです。 音楽を通じてみなさまの心に寄り添い、時には凝り固まってしまった感情を押し流す手助けをしたい。 クラシックのテクニックを土台に様々なジャンルから選んだ優しいメッセージ曲をお届けしており、 「魂のマッサージ」と称される演奏活動を行っています。